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【インタビュー】淡路島 長男三人組 ~後半~

同年代の存在が、起業を後押ししてくれた。
島を離れても、互いに与える良い影響。

同年代の存在が、起業を後押ししてくれた。
島を離れても、互いに与える良い影響。

ーー多田さんは開業する際、なぜアイスにしたんですか?
多田:いざ淡路に帰るとなった時に、何をするのが楽しいのかというのを考えたんです。淡路の社協で働くことも考えたが、自分が淡路社協に入るよりも違う角度から入るのが淡路は面白いのではないかと思ったんですよね。

ーーあくまでも違う形で、そのジャンルに入り込む方が面白いと。
多田:はい。福祉のことを学んで、地元愛や地域福祉の気持ちはあるが、違うフィールドからその意識を持って帰ってきましたという形の方が、今地域で活躍している子たちにも新しい視点を共有してもらえるかもしれないなと。他にも、興味がなかった地域の人たちを巻き込めるかも知れへんし、淡路に来たい人たちにもそういった気持ちを持って淡路を見てもらえるかも知れへんしと思って、まずは仕事を辞めると決めました。

ーーなるほど、その中でなぜアイスキャンディーを?
多田:辞める前にふっと思い浮かんだんですよ。実は石垣島が好きで、石垣島を訪れていたときにできた友人になった夫婦がアイスキャンディー屋さんをやっていて。その人たちは島に来る人たちを見ながら、住んでいる人や今住んでいない人にも喜んでもらえて自分達も楽しみながら島のために続けていけることは何かと考えて、アイスキャンディーにたどり着きました。それをヒントに、島の素材を使って島の魅力を伝えて、自分達が地域に溶け込んで行くツールとしてアイスキャンディーを通じて、地域に根を張っていきたいと思うようになりました。

ーー島の魅力を伝えること、地域に溶け込んでいくためのツールとしてアイスキャンディーがピンと来たんですね。
多田:アイスキャンディーがツールになれば、島の素材も使えるし生産者さんと繋がってその魅力も伝えられる。地元の人も老若男女アイスが馴染みがあるし、外からきた人もきっかけに来店してもらえるかなと思いました。道路沿いにお店を置いた方が、お客さんも来てくれるだろうけど、あえて自分が生まれ育った場所にお店を置きました。というのも、空き地と空き家だらけの拠点の周りに新しいお店や人が移り住んだりすることで賑やかになっていくと考えたからです。賑わいの始まりになるようにということで、アイスキャンディーから始まるまちづくり が店のコンセプトに決まり、店を構え、出会いがあり、今の商売に繋がっていますね。

ーー「アイスキャンディーから始まるまちづくり」というコンセプトはとても素敵だと思いました。お金儲けだけが目的ではないという割り切りがすごいです。
多田:アイスを売るためだけに売ってないですからね。
岩鼻:僕はバイヤーですが、なんのためにやるか、誰のためにやるかという本質の部分は、淡路島の魅力を届けていく俺らが絶対にすてたらあかん部分。金儲けのためにやってるんちゃいますからね。
商売だけの話をすると、会合に足を運ぶ時間をアイス作りに当てた方が儲かるんですよ。でも、僕が大切にしたいのは自分の人生を仕事を通じてどうやって豊かにするか、ということですからね。
多田:アイスキャンディー職人になって日本一になろうなんてことは微塵も思っていないですね。たまたまアイスキャンディーをツールとして選んだというだけで。

ーー意志の強さと芯にある思いが伝わってきます。地元で開業する勇気もすごいなと思います。他者の目が気になりやすいですし。
多田:地元やからやりやすい部分も、もちろんあります。まず帰ってきてからはいろんなところに顔だして色んな人に覚えてもらいました。町内会でも、多田はんとこの子か、って声をかけてくれるんですよ。多田家の長男として帰ってきているというのは地域にとってもある。プラスになることもしがらみになることもありますけど。
岩鼻:だから、わるい虫がつかないようにしたらなあかんなと思ったんですよ(笑)
オアシス限定で販売しようと声をかけてくれたけど、ライバル会社の渦の丘を呼んで、二拠点で一気に売り込むぞ、と始めましたね。僕個人的には、人の価値を独占したらあかんと思っています。だから、淡路島全域で一気にやって欲しかったから、多田さんを後押ししましたね。おせっかいに(笑)
多田:こういった同年代の仲間がおったから、淡路島で安心して商売ができたことは大いにあります。
岩鼻:思った時にやってしまわないと。暇な時にやりますとか、できるときにやりますって絶対出来ひんから。やったらクラウチングスタートで。最初の5mを思い切ってスタートするか。最初だけはロケットスタートで行くべきだと思っています。

ーー今ではもう大人気商品ですよね。
多田:ありがたいことに多くの方にご購入いただいてますね。ただ、こだわりもあって、アイスを「売れるもの」としてだけ見てるところには、基本的には置いてもらっていません。断わらせていただいてますね。

ーー根っこの思いを汲み取ってくれるパートナーを大切にされるんですね。
島の中でも、今話題になってるからこれ置いた方がいいんちゃうんか?とか、大事にしている思いが伝わらないような売り場であれば、置いてもらわない方がいいと割り切っています。いわりん(岩鼻さん)しかり「うずの丘」さんもしかり、伝えようとしてくれるから安心しています。生産者さんの顔が見えて、淡路島が詰まっているんですって説明してくれれば、そこに外からきた人が見てもなるほど、と思うだろうし。

ーールーツをしっかり伝えてもらってこその商品の魅力なんですね。
多田:アイスキャンディーが1本置いてあって、なんかかわいいと思って食べられても、何もわからへんから、それなら別にうちのじゃなくてもいいんですよね。
岩鼻:なので、置く場所にもこだわりましたね。今釣りでバズりにバズってる淡路観光ホテルさんに唯一置いてもらいました。釣りでバズってる旅館の釣りの人たちが食べてくれるてゆうのはなんかいいやんってなって。
多田:それも、地元・志筑の同級生のお姉さんが女将さんで。不思議とそういう縁ってあるねんなあ。うまいこと縁ってできてんねんなと思いましたね

縁の濃い淡路島。
地域のことを思い、できることを全力でする世代。

ーーそれぞれ育った場所が違いましたが、地域によって違いはあったんでしょうか?
宇城:俺らは世間が狭い。津名郡っていう狭いローカルなところにおった。当時は携帯もないし。そういうのは俺らの世代で最後なんちゃうかな。いい意味で狭くて密な感じはしますね。

ーー宇城さんと岩鼻さんが住んでいた山田はどんな地域だったんですか?
宇城:いい淡路島が山田にはある気がする。人間関係もそうやし、物の魅力もそうやけど。
でも劣等感はありましたね。
岩鼻:クソ田舎のこんなところに生まれて恥ずかしいって元々思ってたけど、今では自分のキャラクターになってます。根性あるし体力もあるから。負けん気もあるし。宇城さんが市役所にいてくれてよかったですよ。なんでもできるし、アイデアマン。山を切り開いてゴルフ場作ったり、秘密基地作ったりしてますから(笑)企画して自分で動ける人が行政には必要だと思うんですよね。

ーー行政側に同年代がいるのは、商売をする上では頼もしいですよね。
岩鼻:大学卒業後に市役所に就職していたら、今の宇城さんはいないですね。日本旅行で一般社会を見てきているものすごく貴重な戦力。
宇城:確かに、もし大学卒業後に入っていたら、ザ・公務員の考え方に染まっていただろうなとも思いますね。

ーー今後どんな淡路島にしていきたいかなど展望はありますか?
岩鼻:津名に住んでるけど、魂?は山田にあるねん。消防・祭りは全部山田ですね。(笑)
でも俺がそうやって育ったから、子供にそうさせたくないんですよ。好きなようにしてほしい。頼むから巣立ってくれと思いますね。自分が敷かれたレールを通らされようとされたのがすごいいややったから。これは夢ですが、2拠点生活をしたいですね。海外には絶対行きたい、淡路島のいいもの持って。それに家族を巻き込んで、家族の時間を作りたい。

ーーお三方はよく淡路島で会うんですか?
今、いい輪ができていますね。同級生まわりでいい輪が出来ていますね。やっと気持ちに余裕ができてたので(笑)だから今月に1回フットサルをやっています。子供連れでできるようになりましたし、すごいいい時間ですね。宇城君が発起人で始めてくれました。

ーーフットサルをやろうと思ったきっかけは何ですか?
宇城:シンプルに自分がサッカーしたかったからですね。あとは子供がサッカーしてるので。大それた理由はないですね。コミュニティの場を作ろうと思って作ったわけではないですし。

ーーそれでも実際に人を集めて、やっているのはすごいです。
岩鼻:宇城君みたいに、この年代は段取り屋が多いです。世話焼きが多くて、マメですね。前に出たがりで、言い出しっぺが多い。(笑)みんな地域のことを思ってるから、すぐ乗ってくれるし、できることを全力でやってくれますね。そこに損得はないですね。これからもつながりを大切に同年代同士刺激をうけながら、淡路島を盛り上げていきたいです!

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