2023.9.4
Hello!AwajishimaWork インタビュー
移住者さんってどんな風に働いているの?
淡路島ってどんな会社があるの?
島くらし淡路では、そんな質問をよくいただきます。
それならば!と、淡路島にある企業の「中の人」にお話を伺いました。
記念すべき初回は、島内企業売上高No.1の沖物産株式会社です。
朝廷に地域食材を献上していた歴史があったり、食料自給率が100%を超えていたり。
自然豊かなロケーションで食事を楽しめるとあって、海辺や山中のお店には島外からたくさんの人が訪れています。
そんな「島のおいしい」を 支えているのが淡路島に本社を置く【沖物産株式会社】。淡路島内の生産者をはじめ国内外から集めた食材を飲食店にお届けする、明治初期創業の食品商社です。
近年では、淡路島の食材を中心とした商材を開発したり、飲食店やメーカー企業とコラボレーションでメニュー開発をしたりなど、商社というカタチにとらわれない新たな「食」の提案を積極的に行っています。
目次
錢田さん 島内、日本各地、海外からの食材が詰まっています。私たち直販部の営業は、朝ここで食材をトラックに積み込んで島内のお店に届けるのが仕事。私は西浦エリアを担当しています。
直販部・営業担当の錢田悠平さん
推しの島グルメは「ズバリ玉ねぎ。僕は苦手なんですが(笑)」
___観光トレンドとして注目の西海岸ですね。ここ数年でお店が急増しています。
錢田さん ちょうど活気づきはじめた頃に担当になりました。
沖物産は、仕入れた商材をそのまま届けることはもちろん、淡路島産の食材を使ったオリジナル加工品の製造もしています。提案した食材が「淡路島の魅力たっぷりのメニュー」になった時には、やりがいを感じますね。
___これまでにどんなメニューが生まれたのか気になります!
錢田さん 淡路島で獲れたタコを使った「タコのボロネーゼ」があります。一般的には牛ミンチを使いますが、その代わりにタコを。どこから仕入れてどんな風に下処理するかなど、商品開発部や加工部などと共に挑戦しました。
___仕入れから加工まで一貫しているから、味のクオリティを保てるというわけですね。苦労したことは何ですか?
錢田さん メニュー開発の肝でもある「味のセッション」ですね。シェフの要望を会社に持ち帰り、加工場で試作して、それをシェフに調理してもらって、フィードバックを元にまた試作を作って…と、何度も往復しました。
例えばタコを切る大きさだけでもイメージどおりに仕上がるとは限りません。実際に食べてみると「口の中で残りすぎる」「小さいと食べ応えがない」とかね。シェフの感性をどう変換して会社に伝えるかが難しかったですね。
___調理のプロと、仕入・加工のプロの橋渡し役ですね。
そして、堀内さんご担当の志筑エリアにもお店が増えていますよね。今回の撮影場所としてお借りしたSHIMA DELI(以下、シマデリ)さんも今年オープンされましたね。
直販部・営業担当の堀内翔太さん
推しの島グルメは「カワハギの肝醤油」
おしゃれなイラストが目を引く「シマデリ」。淡路島のデリカ(お惣菜)が味わえるお店です(淡路市志筑)
堀内さん 実はエリア担当が変わって、他の社員に引き継ぎ中なんです。シマデリさんとは担当だった頃からのお付き合いになります。
シマデリ:柏木宏規さん オープン前から何かと無理なお願いにも応えていただいて、とても助けられました!
___では、柏木さんにもお話をお聞きしていいですか? 運営母体は障害者施設の事業をされているそうですね。
シマデリ柏木さん はい。このお店では一般就労が不安な人にもバックヤードに入っていただいています。例えば、片麻痺の症状がある人にも調理作業をしてもらうとかですね。
堀内さん 当初はハンバーグを内製しておられたのですが、「調理場の負担を軽減したい」とのご要望があり、当社の食品工場で成形したハンバーグをお届けすることになりました。
シマデリ柏木さん いくつも試作していただきましたね。現在は、届けていただいたハンバーグをお店で焼いて仕上げています。
ここで働く人の心や体の状態は一人ひとり異なり、日によっても変わります。多様な人に力を発揮してもらうという意味でも、試作をお願いするときは「現場の負担を減らすこと」と「ある程度の負担作業を残しておくこと」のバランスも重視しました。
淡路島産タマネギたっぷりのハンバーグ。沖物産の食品加工場で成形してお店にお届け。
2階のテラスはイートインOK。風を感じる空の下、背景には沖物産の冷凍倉庫が!
淡路島在住アーティストのお皿に自分でお惣菜を盛り付けられるのもシマデリの醍醐味。
シマデリ柏木さん 島内産の無農薬野菜サラダなどとともに、ご好評いただいています。
シマデリは、障がいの有無に関わらず、働く人も、お客様も、ご縁のある企業さんも、みんなを笑顔にするお店を目指しています!…めっちゃ真面目な話しちゃいましたね(笑)
堀内さん とってもいいことを聞けました!
___多様な人が活躍するシマデリさん!あとで買って帰りますね。
錢田さん 私は結婚を機に。将来は妻の実家がある淡路島に住む予定でしたが、転職は若いうちにと思って仕事を辞めました。
そして、洲本市主催の就職合同説明会で沖物産ブースに座っていた宮垣部長との出会いがあって、今に至ります。
入社は…確か27歳やったよね?
堀内さん そう。2017年12月。
___すごい、銭田さんの入社月を覚えているんですね!
堀内さん 私も同じタイミングで入社しましたから。年齢も同じで、席も隣。中途採用なのにめっちゃ同期です。
___なかなか珍しいことですね。さらに、お二人とも営業職。なぜ、沖物産だったのでしょうか。
錢田さん 前職は金融機関の営業でしたが、せっかくなら淡路島らしい商材を営業したかった。沖物産なら大阪・神戸に支店があって、取引先は日本各地や世界にも。島内だけじゃないというスケール感も魅力でした。
堀内さん 私が淡路島に来たのは、沖物産への転職が決まってから。
以前も大阪で水産チルド食材の営業をしていました。ある時、大学の先輩に転職の相談をしたら「うちの会社見てみる?」と。先輩が沖物産の大阪支店に勤めておられたのがご縁ですね。
それもあって、いかに会社に泥を塗らないようにするかを日々心がけていました。すぐどこからか伝わって社長の耳に届くかもしれないし。
宮垣部長 そういうところも気にしてるんやね。
___地元で商売をされている方は、お互いの距離感が近いような気がします。
堀内さん はい。農家さんや飲食店とお付き合いをしていると、相関図が見えてくることがあるんです。食材を仕入れて届ける私たちは、みなさんのお仕事をつなぐ立場なので。ちゃんとお力になれるよう、各方面への配慮を大切にしています。これから地域を担当する社員が困らないよう、私の経験を伝えているところです。
___移住って、新しい暮らしや新しい会社へのチャレンジでもありますよね。実際のところいかがですか。
堀内さん 私は本社から車で5分の社宅に住んでいます。昭和レトロ感のあふれる建物ですよ。
宮垣部長 良く言えばね(笑)。ワンルームと家庭用の部屋があり、先日入社したばかりの社員も入居しました。
堀内さん 宮垣部長もですが、社宅に住んでおられた当時の直属の上司には、よく食事に誘っていただきました。共通の趣味の釣りに連れて行ってもらったり。島外から来たばかりの私を気にかけていただいて、とてもありがたかったですね。
___慣れない環境で声をかけてもらえるのは嬉しいですよね。錢田さんはどうですか?
錢田さん 私の家は本社から車でだいたい20分。いいところは何より満員電車で通勤するストレスがないこと!
週末は妻の実家で子供と遊ぶことが多いですね。庭に砂場を作ったり、たけのこを掘ったり。いわゆるスローライフができてすごく良いですよ。
僕の地元は兵庫県内の郊外なのですが、淡路島はいい意味でもっと田舎。季節を感じる自然にすぐに触れられるのは、自慢のひとつです。
釣りを楽しむ錢田さん
___通勤や子育ては毎日のことですからメリットは大きいですよね。お二人は、プライベートでも交流はあるんですか?
堀内さん 入社当初は特にね。
錢田さん 嫁さんの実家にも、飯食いに来たよね(笑)
堀内さん 夫婦で可愛がってくれてました(笑)。取引先にも同世代の方がいて、紹介をしてもらって知り合いは広がっていきました。今では一緒に釣りやバイクツーリングをしてるんですよ。特に、西海岸で眺めるサンセットや、和歌山を一望できる「生石公園」はおすすめのポイントです。
和歌山を一望できる生石公園までツーリングで出かける堀内さん
管理部・人事担当 部長:宮垣芳夫さん
推しの島グルメは「旬のいかなご、採れたてレタス…かなぁ?」
___人事担当のお立場として、お二人の第一印象はどうでしたか?
宮垣部長 良かったですよ。
面接ではその人の「全部」を見ています。上司や部下などの立場に関係なく、身だしなみや挨拶、喋り方といった基本を大事にしているので。
堀内さん そんな所も見てるんですね!?
宮垣部長 正直、入社後に力を発揮してくれるかどうかは面接だけではわかりません。日々いろんな経験をしながら成長してくれたらという期待の方が大きいですね。
未来の沖物産を背負っていく世代には、私たちがいなくなっても大丈夫と言える人材になって欲しいな。
___淡路島の会社の多くは若い労働力不足が課題。そんな中でも、沖物産は社員の年齢層のバランスが良いとお聞きしています。
宮垣部長 年齢層にバラツキができないよう、できるだけ継続して採用活動をしています。2023年の春の新卒採用は5名。直販営業部には2名で、島内外から1人ずつ入社しました。入社を希望する人には、とにかく一度会社を見に来てといつも伝えています。
島外の飲食店のニーズにきめ細やかに応えながらも、生産者との繋がりを大切に育んできた
___自然環境の変化や物価高、生産者や飲食店の人材不足など、「食」の業界は外部のいろんな影響を受けますよね。SDGsについての課題はどうでしょうか。
宮垣部長 難しい課題ばかりですが、SDGsのお題目だけ掲げてもしょうがない。本質的な課題を理解した上で取り組んでこそ意味のある話です。「日々の活動が結果的にSDGsにつながっていた」でいいかなと思っています。
___本業に真摯に向き合うことが先決、といったことでしょうか。
宮垣部長 はい。フードロスの問題もそう。今でも長期在庫によってロスを出してしまうことも多少はあるのですが、生産者さんが汗を流して渡してくれた食べ物を無駄にしてはいけない。実感が薄いかもしれませんが日本の食料自給率はめっちゃ低いんですよ。もっといろんな側面から自分たちの食を守らなければと思います。
生産者から仕入れ、加工・流通し消費者まで届けるまでを一貫して見てきた担当者からするとフードロスは存在せず、全てが資源に見えるそう
___数値上では、淡路島は食料自給率100%といわれていますが、将来の担い手がいないと維持できない厳しい現実もあります。
宮垣部長 農業・水産業・畜産業といった一次産業は、人が生きるために本当に大事。
業界トップクラスの企業として、僕らがサポートできる部分はどんどんやっていくべきだと考えています。
例えば、淡路島の生産者と大手企業をつないで「淡路島の食」を発信したり、インターンを受け入れて若い世代を刺激したりといったことには、すでに力を入れています。他にも、地元の農家に新しい人材が入るような仕組みづくりなどもやっていきたい。
それによって「淡路島ブランド」が活性化したら、生産者や飲食店の売上も上がるし、結果的に幸せな人たちも増えると思っています。
象印さんと開催したおむすびイベント
「淡路島産の食材」と象印の炊飯ジャー「炎舞炊き」で炊いたごはんのコラボでおむすびを準備。
おむすびをほおばりながら、多様な働き方を実践する4名の登壇者のトークセッションを楽しんだ。
___最後に、移住を考える人に伝えたい「沖物産で働くといいこと」って何ですか?
堀内さん 働きながら食材の知識が増えるので、食べることが好きな人におすすめ。釣り好きの私でも、沖物産に入ってから「魚ってこんなに種類があったんや!」と驚きましたから。いろんな地域からあらゆる食材を仕入れているので、引き出しが無限なんですよ。
錢田さん 私は逆に、入社するまで食に興味があるとは言えなかった。でも、実際入社して思うのは、どんどん前向きにやりたい人なら挑戦しがいがある場所だということ。自分で考えて行動できる範囲が広いので責任も伴いますが「失敗したら最後」というような環境じゃないですから。
___臆せずチャレンジできるのは、会社に体力があるからこそですよね。
宮垣部長 と言うか、ほったらかしてます(笑)。のびのび自由に。
僕自身、これまでに面白そうなことをいろいろやってみたんですよ。3代前の社長の方針が「何でもやってみなはれ」でしたから。生産者さんの現場を回って一緒にオリジナル商品を開発するなど、誰もやってこなかったことをやってみたら、自ずと大きな仕事になっていきました。
今の沖物産があるのは、これまでのチャレンジの積み重ね。みんなにも、これから挑戦したいことがあったらどんどんやって欲しいです。
堀内さん 振り返ってみると、1年目でも自由にやらせてもらいました。もちろん、ダメ出しされたらすぐに修正してまたトライ。
錢田さん 自由といってもそこは営業職。目標とする数字は掲げますが、達成までのアプローチは自分で考えるから「やらされている感」はありません。
___それぞれ、目標に向けた業務のやり方は違うものなんですね。
錢田さん&堀内さん 全然違います!
___声が揃いましたね(笑)
錢田さん 入社して間もない頃は特に、お互いの仕事ぶりを共有していました。いいところを盗んだり、気になるところは反面教師にしたり。
堀内さん 前任者から引き継いだままではなく、他の人の仕事も見ながら自分なりにアレンジしていく。そんな空気感のある会社です。ええ会社に入れたなぁと思っています!
インタビューが進むにつれてふくらむ(笑)の掛け合い。上下関係がフラットな社風とお聞きしていましたが、存分に「沖物産の風」を感じることができました。
チャレンジを積み重ねて業界トップクラスにまで発展した沖物産。そんな地元企業が淡路島の食文化を支え、淡路島ブランドを盛り立てているんですね。
沖物産についてもっと知りたい方はこちらも見てみてください
暮らすことと、働くこと。どちらも移住希望者さんにとってはとても大事で、悩まれている方が多いです。
島くらし淡路独自でお仕事に関するアンケートをとったところ、仕事で悩んではいるが、淡路島の会社をそもそも知らないために、淡路島の企業に就職という選択肢が頭に浮かばないという声が多くありました。
そこで、淡路島へ移住され、島内の企業で働く方の生の声を届けたいと、「ハロー! Awajishima Work」をスタートしました。
島くらし淡路では、淡路島への移住についてのご相談を承っていますので、淡路島での働き方、暮らし方が気になる方は、ぜひお問合せくださいね。